樹海を泳ぐイルカ
第8章 崩壊
帰ってきた瞬間に僕の左頬に激痛が走った。
それはあまりの早さだったから状況を察知するのにも少し時間がかかった。
ぼんやりした視界のなかに母さんが映っている。
……ああ、叩かれたのか。
重たい頭でゆっくり状況を把握していく。
そんな僕と相反するように母さんは尖った気迫をあらわにしている。
「あなた一体どういうつもりなの?!退学にでもなりたいの?!」
母さんの言葉は興奮しているせいか早口で、おまけに話の趣旨がみえなかった。
だけど、だいたい分かる。
どうせまた学校から最近の無断欠席の報告がはいったんだ。
「……」
「黙ってないで、答えなさい!!!」
「………」
「彼方、あなたのために母さんは言っているの。あなたが世界に認められて真っ当な人生を送るために……なのに授業放棄と無断欠席だなんて…父さんは」
「父さんはこんなことしなかったわよ」
僕の声と母さんの声が重なった。