樹海を泳ぐイルカ
ふと見た透子の腕をみて僕は愕然とした。
「透子……それ…」
透子の細くしろい左腕は青紫に変色して腫れ上がり、見苦しい姿に変わり果てていたから。
透子は僕の視線に気付き、左腕をとっさに隠した。
「……透子」
「…………」
「今さら隠さないで。透子」
「………」
「……透子」
僕はできるだけ優しい声で言った。
すると透子はゆっくりとぎゅっと結んだままの唇をひらいた。
「……あたし、魔物なの……」
透子をつくる細い曲線が小刻みに震える。
「……実の兄をたぶらかした魔物なんだ……パパとママから生まれた子供じゃない……悪魔の国からきた魔物なんだよ」