樹海を泳ぐイルカ
なんだよ。
声を聞きつけて樹海にまで助けにきて
正義のヒーローかよ…。
……クソッ。
「樹海(ココ)にいるとお兄ちゃんが見つけてくれるような気がする」
僕は目眩がした。
樹海と透子の後ろ姿がゆらめいてみえた。
ぼんやりと。
「彼方は?」
「え?」
「彼方はどうして樹海(ココ)にきたの?あたしのせいで死に損なっちゃったみたいだけど」
透子は振り向いて、いたずらっ子のような笑顔を浮かべていた。
「………僕は…」
僕は下をむいた。
正義のヒーローに、虐められっ子は争いの対象になるだろうか?
透子にだけは知られたくなかった。
全てを話してくれた透子には申し訳ないが
透子の前だけでは、かっこいい僕でいたかった。
それが、せめてものプライドだった。
僕は狡い。