樹海を泳ぐイルカ
「あ、着いたよ」
透子の言葉でふと顔をあげると、樹海の出口が目の前にあった。
「……うん」
樹海をぬけると、透子は“ウーン”とおもいっきり伸びをした。
「じゃ、あたし帰るね」
帰るの?
そんな腕になっても?
そうだ。帰るんだ。
透子の家だってことは変えられない事実なんだ。
「バイバイ」
笑って手を振る透子。
「ばいばい」
それに答えるように、ぎこちなく手を振る僕。
「あ、今日楽しかった。またね」
僕は透子の言葉で一喜一憂する。
透子、君はそのことを知っているかい?