あなたの こども うみたい
夕方、横山先生の部屋を訪ねた。

「白石教授からの紹介の木下と申します。」

「どうぞ。」

白衣の先生は、想像してたのと違い、

小柄で威厳があるというより、

人のよさそうな感じすら受けた。

「横山です。韓国語の通訳をしてくれる・・・」

「木下です。木下ミサキと申します。」

「さっそくですが、まずこちらのことからお話しましょう。」

「はい。」

「まず、今回の韓国訪問は、私独自の非公式のものです。

 あちら側は国家機関なのですが。

 ですので、見たこと話すことすべて内密にお願いしたい。」

「はい。」

「で、聞くところによると、通訳だけでなく私の研究を助けてくれるとか。」

「はい。率直に申します。凍結精子の人口受精を受けたいのです。」

「ご主人はご存知なのかね?」

「いえ。独身です。」

「何ですと?」

「先生には、嘘はつけません。

 実は、ある限定した方の精子が欲しいのです。」

「君、ある程度事情を知っているようだね。」

「はい。無理を承知でお願いにあがりました。」

「確かに、通訳と研究、

 ひとりで済むのならそれに越した事はないと思っている。

 さっきも言ったとおり、私個人のことだからね。」

「はい。」


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