花街妖恋
それからというもの、玉菊は以前のように九郎助の近くではしゃぐことはなくなった。
帯を締めるときだけが、顔を合わせる唯一の時間と言っても過言でないようになってしまった。
もっとも九郎助は、そのようなことは、あまり気にしない。
元々予定外に入り込んでしまった廓だ。
このままここに居座るつもりもない。
ただ何となく、気づけばここのところ、いつも近くにあった笑顔を捜している自分がいることは事実なのだが。
「ああ、何だか風が強いねぇ。寒くなってきたし。こんな日は早く灯を落とさないと」
タツが言い、九郎助と共にがたがた鳴る廓の戸などを閉めて回る。
こんな日は、客も足が遠のきがちだ。
さすがの玉菊も、丁度今しがた茶屋から帰ってきた。
が、華龍楼に入るなり、玉菊はその場に頽れる。
「玉菊、どうした」
遣り手とタツが、驚いて駆け寄る。
玉菊は傍の禿に支えられながら、土間に手を付いている。
帯を締めるときだけが、顔を合わせる唯一の時間と言っても過言でないようになってしまった。
もっとも九郎助は、そのようなことは、あまり気にしない。
元々予定外に入り込んでしまった廓だ。
このままここに居座るつもりもない。
ただ何となく、気づけばここのところ、いつも近くにあった笑顔を捜している自分がいることは事実なのだが。
「ああ、何だか風が強いねぇ。寒くなってきたし。こんな日は早く灯を落とさないと」
タツが言い、九郎助と共にがたがた鳴る廓の戸などを閉めて回る。
こんな日は、客も足が遠のきがちだ。
さすがの玉菊も、丁度今しがた茶屋から帰ってきた。
が、華龍楼に入るなり、玉菊はその場に頽れる。
「玉菊、どうした」
遣り手とタツが、驚いて駆け寄る。
玉菊は傍の禿に支えられながら、土間に手を付いている。