花街妖恋
 玉菊を部屋に運び、禿が敷いた布団に寝かせてから、九郎助はついてきた遣り手と共に玉菊の足を調べ、一つ頷いた。

「折れてはおらぬな。したが、えらく酷く傷めたものじゃ。しばらくは歩くこともままならぬであろ」

 しばらくは寝ておくことじゃな、と言い、立ち上がった九郎助だったが、つ、と袖を引かれた。
 見ると、玉菊が見上げている。

「・・・・・・何じゃ」

 玉菊は、たまにこういう頼りなげな感じになる。
 妙に儚げに見えるのだ。

「心配せんでも、お主ほどの遊女なら、多少勤めを休んだところで、客は離れまい」

「そうだよ。とりあえず、今は怪我を治さないと。足がどうにかなっちまったら、太夫道中もできなくなるよ」

 太夫道中は、花街に生きる遊女の憧れだ。
 玉菊は今も道中をしているが、位はまだ天神なので、正式な太夫道中ではない。
 太夫のそれとは、豪華さが違うのだ。

「無理せず、冷やしてじっとしておくことだな」

 頷くように俯いた玉菊の手をそっと外し、九郎助は遣り手に後を任せて部屋を出た。
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