花街妖恋
炎の中で
夜半。
けたたましい半鐘の音に、廓の静寂は破られた。
このところの強風のお陰で、花街は客足も遠のき、どの店も早々に眠りについている。
静まり返った花街の空が、真っ赤に染まっていた。
「火事か? 何だ、やけに火の回りが速い・・・・・・!」
タツが通りに飛び出し、ざっと辺りを見て呆然となった。
すでに花街は火の海だ。
いくら木造の建物とはいえ、速すぎる。
「故意の付け火じゃないかい? 湯屋も廓の台所も、早めに火は落としてたはずだし」
遣り手も様子を見に出てきたが、すぐに中に戻って遊女らを叩き起こしに行った。
程なく花街全体が騒がしくなる。
どの置屋からも、寝間着姿の遊女や男衆が飛び出し、大門目掛けて逃げ惑う。
その様子を、どこかのんびりと眺めていた九郎助は、不意に妖気を感じて振り向いた。
「おお怖や。会うなりそんな睨むこともないだろうに」
そこには一遊女のナリのおさん狐。
けたたましい半鐘の音に、廓の静寂は破られた。
このところの強風のお陰で、花街は客足も遠のき、どの店も早々に眠りについている。
静まり返った花街の空が、真っ赤に染まっていた。
「火事か? 何だ、やけに火の回りが速い・・・・・・!」
タツが通りに飛び出し、ざっと辺りを見て呆然となった。
すでに花街は火の海だ。
いくら木造の建物とはいえ、速すぎる。
「故意の付け火じゃないかい? 湯屋も廓の台所も、早めに火は落としてたはずだし」
遣り手も様子を見に出てきたが、すぐに中に戻って遊女らを叩き起こしに行った。
程なく花街全体が騒がしくなる。
どの置屋からも、寝間着姿の遊女や男衆が飛び出し、大門目掛けて逃げ惑う。
その様子を、どこかのんびりと眺めていた九郎助は、不意に妖気を感じて振り向いた。
「おお怖や。会うなりそんな睨むこともないだろうに」
そこには一遊女のナリのおさん狐。