花街妖恋
「言え! 何をしたのだ!」
あまりの九郎助の怒りに、ひ、と息を呑んだおさんだったが、すぐにいつもの小憎らしい笑みを浮かべる。
「ふ。ま、いつものこった。仲の良い若夫婦がいたからさ、男のほうを、誘ってやったんだ。そしたら思いの外嵌っちまって、嫁が乗り込んできてさ、この有様さ」
「お前という奴は・・・・・・!」
ぎり、と奥歯を噛みしめる九郎助に、おさんはちょっと意外な顔をした。
「何怒ってんだよ。私もお前も、火に関しては耐性があるだろ。こんな火事、どうってこたない」
言いながらも、おさんはそわそわと辺りを窺う。
目を離した途端、一目散に逃げ出しそうな勢いだ。
確かにおさんの言うとおり、九郎助もおさんも、妖狐の類は火の属性を持つため、炎には強い。
だが今は、前の喧嘩の後遺症か、力がまだ本調子ではないのだ。
おさんがそわそわしているのも、あまり力が戻っていないため、早くこの火事から逃れたいと思っているのだろう。
このままおさんを、傍の廓に押し込めてしまおうかと思っていると、九郎助の後ろから、タツが切羽詰まった声をかけた。
「九郎助! た、玉菊が!」
あまりの九郎助の怒りに、ひ、と息を呑んだおさんだったが、すぐにいつもの小憎らしい笑みを浮かべる。
「ふ。ま、いつものこった。仲の良い若夫婦がいたからさ、男のほうを、誘ってやったんだ。そしたら思いの外嵌っちまって、嫁が乗り込んできてさ、この有様さ」
「お前という奴は・・・・・・!」
ぎり、と奥歯を噛みしめる九郎助に、おさんはちょっと意外な顔をした。
「何怒ってんだよ。私もお前も、火に関しては耐性があるだろ。こんな火事、どうってこたない」
言いながらも、おさんはそわそわと辺りを窺う。
目を離した途端、一目散に逃げ出しそうな勢いだ。
確かにおさんの言うとおり、九郎助もおさんも、妖狐の類は火の属性を持つため、炎には強い。
だが今は、前の喧嘩の後遺症か、力がまだ本調子ではないのだ。
おさんがそわそわしているのも、あまり力が戻っていないため、早くこの火事から逃れたいと思っているのだろう。
このままおさんを、傍の廓に押し込めてしまおうかと思っていると、九郎助の後ろから、タツが切羽詰まった声をかけた。
「九郎助! た、玉菊が!」