花街妖恋
「危険だからと九郎助に言われて、戻る途中で、焼けた梁が落ちてきた。真上にだよ。四方は火の海だし、逃げ場などない。覚悟したが・・・・・・梁は私に触れることなく、砕け散って足元に散らばった」

「どういうことです?」

 眉を顰める玉菊に、タツは軽く首を振った。

「わからぬ。でも、不思議はそれだけじゃない。あのときすでに、店の入り口までも火に包まれていたのに、一筋だけ炎が避けていたんだ。まるで私を導くようにね。その筋を通って、無事に出られた」

「・・・・・・」

「お前を助けたのは、九郎助だろう? 私は、あ奴は・・・・・・いや、あのおかたは、束の間この世に降り立った、神か仏か。そういうものだと思うんだ。別れる直前、私に力を分けてくださった」

「九郎助様が、神様・・・・・・?」
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