両想い【完】
山野を前にして、今さら緊張してきたのか次の言葉に詰まっていると、聡も近くまで来て、面白そうな顔で見ている。
「?で?なに?」
なかなか話し出さない俺に山野が言ってきた。
「あっ、やっ…あのさ、さっきの…
山野が話してたやつ、何ていうの?」
「えっ?さっきって…美愛?」
いきなりなに?って顔で確認してくるから恥ずかしくなり「多分そいつ…」なんて少し小さな声で答えた。
聡はそんな俺達のやり取りをニヤニヤしながら聞いていた。
山野は少し驚いたような顔をしながらも、朝のこともあったからか、特別嫌がるふうもなく、当たり障りのないことを話してくれた。
***
知っていたけど、知らなかった美愛のことを、この瞬間、いや、朝のあのドキドキした瞬間から求めてたのかな…
***
「あたしがさっきバイバイした子だよね?
あの子は井上美愛〈いのうえみあ〉って
いってあたしの親友。
1年から同クラでね、すんごいいい子なの。
朝…見てた、よね?
…実はあたしさ、振られたんだけど…
美愛に聞いてもらったらなんかさ、
取り敢えず涙は止まった、かな(笑)」
そう言うと美愛とのやり取りを思い出したのか、嬉しそうに優しい顔で俺を見る。