両想い【完】

体育祭練習3・ケガ



「なんか、すげぇ嫌な予感すんだけど…」


気持ちが高ぶるのを押さえながら聡に言う。


「…あぁ、俺も。あの1年だろ?
俺も気になる…いくぞっ」


二人で更衣室のドアを思いきりノックし、声をかける。


「すいません!中に井上さんまだいますか?
他に誰か残ってますか?」


「すいません!開けますよ?いいですね?」


大声で呼び掛けながらガチャッとあけると、広い更衣室の隅っこに、崩れたように壁に寄りかかる美愛がいた。


更衣室はすでに他には誰も居なかった。


***


「!!美愛っ!!」


俺は夢中で駆け寄り抱きかかえる。


美愛は頭を壁にぶつけたのか、少しぼ~っとしていたが、気は失ってなく、酷い外傷も見当たらなかった。


「祐!保健の中田せんせ、呼んできたぞっ」


聡と養護教諭が更衣室に入ってきて、教諭は美愛の横にしゃがみこんだ。


「井上さん!?聞こえてるかしら?
名前、言える?」


ゆっくり頷き『いの、うえみ、あです…』と返事する。


「あ~そうよ、軽い脳震盪おこしたかな、
高城君、あなた力ありそうよね?
そのまま井上さん抱えて
保健室来てもらえる?」


「わかりました、美愛、
ちょい、俺の首に腕回せ…」


「…ごめん、なさい、祐…君。ありがと。」



< 112 / 364 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop