両想い【完】
美愛は手に持つチョコを男子に部活でからかわれたくない…とさらに後ろ手に隠して俯きながら通り過ぎようとした。
「あっ!!それ私の!!返してっ!」
丁度横を過ぎるときに女子が叫び、持っていた包みをガシッと奪い取った。
一体何が起きたか分からなかった美愛は唖然として二人を見る。
「どうして井上さんがこれ持ってんのよ!!
ひどいよ!!私が田上くんの机に入れたの、
勝手に取らないでよ!!」
「あぁ、なんだぁ、
返事がどうのと言われたけど
チョコが見当たらなくて、
おれが無くしたのかと思って焦ったぁ、
じゃあそれ受け取るよ。返事は明日な」
美愛を置いて話が勝手に進む。
でも、美愛は気が弱い訳ではなく自分の言い分を伝えた。
「田上君、それは私が顧問の森先生に
これから渡すために持ってきたのだから、
あなたには渡せないよ。
えっと、吉村さんだよね?
私はこれを駅前のナナセ洋菓子で
一昨日買ったの、値段も
中身もちゃんと言えるよ」
でも泣き叫び気持ちが昂った吉村さんは聞き入れず、田上君はとりあえず部活へ行ってしまった。
『話しがついたら持ってきて』と言い残し。
騒ぎを聞いた数人が泣いてる吉村さんに駆け寄り、吉村さんの話す一方的な言い分をみんなが信じた。