両想い【完】
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由紀は腕に絡み付いたまま何か話し続けてた。
が、さっきの噂のこと(親しい山野が話してくれたんだから噂ってか事実、か…)や朝みた泣き顔や、『やっつける』って言ってた可愛い声や、なにするつもりだったのか?なんて考えてて全く聞いてなかった。
「祐君っ!聞いてる?
来月の祐君の誕生日のはなしだよぉ?」
学校を出てから駅までの道は、結構人通りもあるところ。
そこで大声で叫ばれて正直、痛い視線を感じて腕を振りほどいて離れたくなった…。
しかし、話を聞いてなかったのは俺、さっきも今も、俺にも非があるのは確かだ。
でも、それでも由紀の態度はなんだかイライラした。
俺がクラスに迎えに行くことが、嬉しい、ではなく『自慢』と言った由紀。
来なくて寂しい、なのではなく『恥ずかしかった』由紀。
ダチと話していたところに挨拶なしで割り込み、自分を通す由紀。
同校のやつらなんかが大勢見ているとこで非難しながら叫ぶ由紀。
こいつは…俺のことを考えてくれたり、心配したり…しないのか?…。
あっ、違うな、俺もそうなんだ、由紀のことなんかさっきまですっかり忘れてたんだ…