両想い【完】
「昨日の用事はバイクのメンテと
あの、美愛用のメットを買うこと。
いつもの店に行くと彼女を乗せるなら、
女をのせたことない俺に、試せって…」
「今まで、1度もなかったの?」
少し落ち着いた美愛が聞いてきたので頷く。
「で、店の颯太さんていう人が
色も型も同じバイクでさ、
俺のをメンテ中に
奥さんも一緒で貸してやるってなって…」
「奥さんを、貸すの…?」
「あ~、言葉が悪りぃな、
試乗に付き合わせていいぞってことな。
だから、あのバイクは俺のじゃなくて、
颯太さんので、一緒にいたのはその奥さん。
彼女が使ってたメットは似てるけど
美愛のとは違うやつだ。」
「そう…でも、その人のバイクでも
女の人を後ろに乗せるって初めては…
昨日その奥さんと経験、しちゃったんだね…」
!!!!
過ぎてしまったことをこんなに後悔したのは、初めてだった…
「そ、う…だな…俺、何やってんだろ……
山野が言ってた、俺らが笑ってたってのは
たぶん、これで大丈夫とか、そんなんで
たいした話しはしてない。
これで全部、やましいことはないんだ…」
「うん、話してくれてありがとう。
やっぱり、ちゃんと理由があったね。
よかった…でも苦しい…」
美愛の瞳からまた、ポロリと涙がこぼれた…