両想い【完】


「じゃあさ、
その彼女は彼氏を気遣ったりしないわけ?
たとえば、話聞いてないってわかったらさ、
悩んでんのか?とか、具合わりいのか?
とかそんなんもないの?」


「なんか、さっきからの由紀のを聞いてっと、
好きなやつが彼氏ってんじゃなくてさ、
連れてて、ちょうどよかったのが
たまたま俺なの?って感じちゃうよ?」


俺は自分の悪いのを隠し、由紀を責めた。


そう言うと、しゅんとして話し出した。


「っごめんね?なんか、
私だけがお誕生日気にしてたり、
クラスがかなり離れちゃったの気に
してるのかな?って思っちゃって…
イライラしてたかも…
祐君…あたしを見てくれてる?」


「っ…そっか…
…確かに俺も…ごめんな?」


素直に言われると自分のいい加減さが招いたことだとイヤな気持ちになった。


お互いにうかがうようにしばらく黙ったまま見つめあった。


俺は自分の中に沸き上がった感情をうまく処理できず、しょげている由紀を突き放すこともできない。


俺はそっと触れるだけのキスをした。


由紀は照れた顔をしながらも嬉しそうにしていた。


でも俺はその笑顔を見ながら、口を拭いたい衝動を押さえるので一杯だった 。


しばらく、話をしてから由紀と駅で別れて自宅へ向かった。


***


自室のベッドに横になると頭に浮かぶのは彼女の由紀ではなくて美愛…


俺の中に静かに、でも確実に生まれた美愛への想い…


恋愛に対して誠実で一生懸命な美愛


告られ流され気味で付き合ってきた俺…


美愛をもっともっと知りたい


関わりたい


話したい


…美愛に触れたい…

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