両想い【完】


「ネイルし終わってエレベーターに
乗ったの、サロンは六階でね?」


美愛の頭を撫でながら続きをそくす。


「そうしたらあの人は既に乗っていて、
私…最初は爪を見ていて気にしてなくて」


「そうしたらあの人が私を覗き込んできて、
…手を、ギュッて、握りしめてきて…
キレイネ、カワイイネ、ディナーシマショって
離してってっ、一生懸命言ったの!」


「なのに、なかなか…離してくれなくて
一階についても、着いてきて…
手は、何とか振り払ったんだけど…」


話し終わると美愛は俺に倒れかかってきた。


「部屋、戻ろう…」


「うん…疲れた…」


うなだれる美愛を支えて歩く。


***


部屋に戻ると美愛は直ぐに洗面台のほうへいき、ドアを閉めた。


10分以上だったが、まだ美愛が出てこない。


ドアに耳を近づけてみると、水の流れる音が聞こえてきた。


「美愛、ここ開けて!!」


ノックをしながら声をかけるが返事はない。


「美愛っ!!」


ドンドンッ!!


しばらくしてようやくカチャリと鍵が開いたが中にはまた直ぐに手を洗いだす美愛。


ただ、手を握られただけではないのかもしれないと、思った。






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