両想い【完】
その涙を見た瞬間、ようやく我に返った俺は思いきり女を引き剥がし、さらに押しやった。
女はバランスを崩したが、不敵な笑いをうかべていた。
俺は思いきり口元を腕で拭き取りながら、美愛に近づく。
「フフッ…ほらね、
井上さん、高城君はあたしとも
キスしてくれたわ…言ったでしょ
あんたなんか、ただの遊びだって」
思わず振り返り怒鳴り付けた。
「っざけんなっ!てめぇなんか、
眼中にねぇよっ!!
いきなりしがみついて
勝手にしただけだろうが!!
何が『してくれた』だ、冗談じゃねぇ!!」
涙する美愛を腕の中に強く強く抱きしめた。
俺が足音に振り返ってからここまで、ほんの1、2分あったかどうかの出来事だった。
「っ!なによ…高城君には
こんな女は似合わない!!
あたしはっ!!絶対邪魔してやるっから!!」
「似合う、似合わないとか
お前の言うことなんかかんけ~ねぇんだよ!!
俺がっ!美愛じゃなきゃダメなんだよ!!
俺らに構うな、とっとと、どっかいけよっ!!」
美愛を抱きしめたまま、感情むき出しに大声を上げた。
階段の踊場で騒いでいたので、かなりの注目を浴びていた。