両想い【完】
俺は、呼び出しならどこだろう?と考えて、部室棟を思い出した。
自分も告られたことがあったし、授業中は誰もいかない。
あれからかなりの時間が経っているし、部活も始まる頃だ、呼び出しがそこだとして、ま
だ、居るだろうか?
***
春の陽が射す中近づくと、数人の運動部の連中が通るなかで、部室棟入口の数段の階段の隅に座り、足を抱え込んでうつむく美愛が居た…。
その姿をとらえながら山野にメールを送る。
『鞄を持ってそちらに行くから側に居て』と返信があった。
声はかけずに近づき、そっと隣に座ると、さすがに気がついたのか、ビクッとした後にゆっくりと顔を上げた…。
その顔には、涙のあとがたくさんで、瞳からはまだ溢れそうになっていて…左の頬が赤く…叩かれたであろう痕もあった…。
「ここ、暖かくてきもち~な!」
俺は美愛の頭をそっと撫でながら明るめの声で関係ないことを言った。
俺に顔を見られた美愛はすぐにまた、顔を俯かせてしまっていたが…。
しばらくそのままでいると、『美愛ぁ~』と声がして、山野が鞄を抱えてやってきた。
「はい、祐君のも。あたし、
気が利くでしょお~。」
そっと顔を上げた美愛に、山野は鞄を渡し、俺とほぼ同時に『ありがと』『サンキュ』と言った。