両想い【完】


教室から出ようとしたら、さっきの俺の様に中を覗いている男がいた。


誰か目当てのやつを見つけたらしく今まさに声を出そうとした。


俺は廊下から何とはなしに見ていたら、目の前に女が走り込んできて、その男の腕を引っ張り『井上さん!』という控え目な男の声と同時に廊下に連れ出した。


「何でいつまでもあんな女に構うのよっ!!」


そう怒鳴ったのはあの、相模だった。


すると、この男が元カレか?ハンカチ男の。


聞こえたらしく呼ばれた美愛は訳が分からず教室から顔を出し、キョロキョロ。


すると、ハンカチ男は、相模の問いかけにも答えずに腕を払い、『井上美愛さん!』と呼び掛けた。


呼ばれて視線を向ける美愛。


俺までも視界に入ったらしく、俺にはニコリとしながら、すっと、視線をハンカチ男に向けた。


「はい、井上美愛は私です、
只今仕事中なので、出来ましたら…
後でか、手短にお願いします」


頭を軽く下げながら話すと、目の前まで迫っていた男が、『あのっ、これ…ありがとう』とハンカチを差し出している。


「あっ、あのアイス屋の!
わぁ!わざわざありがとうございます♪
文化祭で探しにくいのに、すみません」


優しく微笑んでから受けとると、『それでは』と教室に入ろうとした。




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