両想い【完】
このままではどうにも騒ぎが収まらない様子になってきて、二人で見つめ合いながら考える。
「美愛、頬なら我慢できる?」
司会者にも聞こえないような囁き声で美愛に聞いてみると、瞳をクルクルさせていたが、この止まないコールに諦めたのか、小さく頷いた。
「じゃ…」
司会者に聞こえるように言って、美愛の肩を抱き寄せ、みんなに横顔が向くように、美愛と向かい合わせる。
会場内は静まっているように感じたが、実際は二人とも緊張で周りの音など聞こえていなかったのかも。
「美愛…右頬の、口の近くにするな?」
腰を軽く抱き俺は見下ろし、美愛は見上げる。
了解の意味だろう、震えている瞼をそっと閉じる美愛。
俺は体を少し屈めて、美愛の左頬(皆に見える方)に手をおき、右側から美愛の唇ギリギリにキスをする。
ほんの2、3秒程度で離した、途端に叫び声なのか、怒鳴り声なのかわからないのが聞こえた…。
目を開けた真っ赤っかの 美愛と微笑み合い、司会者に『じゃっ』と言って美愛と手を繋ぎ、さっさと舞台を駆け下りた。
ホールから出て静かな廊下を二人で歩く。
ふと美愛の顔を見ると瞳に涙がたまってる。
「大丈夫か?イヤだったよな…ごめんな」