両想い【完】


美愛は会場になる市内のグラウンドへ一人で来た。


なんとなく、葵が自分に何か伝えたいのだっていうのは、分かっていた。


夏休みに遊びに来たときに、祐君とカレカノになれたんだと話したら、眉間にシワをよせながら、睨み付けてきて、『ズルい』といって帰ってしまった。


それからは葵から連絡が減り、10月になると今大会が始まりサッカー漬けの毎日だったようで、メールも何もかもなくなっていた。


***


葵のチーム側の応援ベンチに座り葵を探すと、直ぐに見つかり、向こうも美愛をみつけ、しばし、見つめ合う。


葵は軽く微笑んでから手を上げるとチームメイトのところへ戻った。


午前9時、キックオフ!!


相手は昨年も葵達が戦い、準々決勝で負けたチームだった。


前半、葵のチームは上手く体が動かないのか、相手に攻めこまれて2-0。


美愛は声の限りに葵を応援するが、葵に今までのように客席を見る余裕はなかった…。


***


後半が始まり、ようやく葵のチームは上手く機能し出した。


まずは1点を返し、このままと押しているときだった。


鋭いホイッスルの音と『葵っ!』とチームメイトが叫ぶ声と、美愛の目の前で脚を抱えて倒れこむ葵の姿…





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