両想い【完】
美愛は思わず駆け出しグラウンドに入ろうとしたが、周りの大会関係者に止められる。
「かっ、家族なんですっ!!葵っ!」
叫ぶ美愛に本当だと分かったのか、柵をどかしてグラウンドに入るのを許可してくれた。
しかし、試合は続行される、葵はピッチの外に出されて医務室から医師がくるのを待っていた。
「葵!!」
美愛は膝まづき、葵の側に行き呼び掛けた。
「み、美愛…ごめ、ん…
さい、ご…までプレー…できねぇ、わ」
痛さを堪えながら美愛の方を見ながら話す葵。
医師が来てざっと見たところ、接触によりふくらはぎが蹴られたかたちになり、倒れた際に膝から倒れた為にそちらも強打したらしい。
骨や筋に損傷があるかは、精密検査をしないとわからないらしい。
直ぐに病院へ搬送し、検査を受けるべきと言われたが、葵が頑として承諾しない。
「痛みなら耐えられるっ…
頼むから最後まで仲間と居させて…」
美愛には家族として大切な葵を早く病院へ連れていきたい気持ちと、仲間とサッカーを大切にする葵の想いを理解したいって気持ちに挟まれ、決断が鈍る。
後半、残り10分程…美愛は葵の想いを尊重した。
「葵君…ホイッスルがなったら
直ぐに病院行くからね?」