両想い【完】


しばらく、沈黙が二人の間に漂う。


「ん…そうだな、
なんか、当たり前の答えが
帰ってきたな…」


「葵君…」


「分かってる、ただ、
どうしても伝えたくてさ、
このままじゃ、俺…
先に進めないから…」


「ありがとう…
脚…どうなるの?」


無理している苦しい笑いを作りながら感情をあまり表さずに話す葵。


「あぁ…骨は大丈夫だって…
でもまぁ…サッカーを
真剣に続けていくのは…無理かもな…
まっ、治療できる怪我だったから…」

悔しいはずの葵…美愛は思わず近づいて手を握りしめた。


「今だけ…泣いていいよ?」


驚きに目を見開きながら美愛を見た葵は、温かい慈愛の瞳に見守られていると理解した途端に顔を歪め…美愛にすがり涙した。


***


どのくらいの時間が経ったのだろうか、病院の窓の外は高い陽射しではなくなってきていた。


ガチャリ…とドアが開く音がして葵の両親と診てくれた医師が出てきた。


涙は止まっていたがぼ~っと力が抜けた葵は、美愛に寄りかかったままだった。


「葵、美愛ちゃん、
お昼もまだだったわよね?
ファミレス寄ってから帰りましょう」


叔母さんの声でようやくのそりと動き出した葵を、父親が支え四人で病院を後にした。




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