両想い【完】
「どうした?」
俺と美愛の身長差は多分20㎝くらい、俺は少しだけ覗くように身体を屈めて聞いた。
そこで美愛が、左手で頬を触っているのが見えて、ハッと気がついた。
叩かれた頬を気にして俯いていたのだ、と…。
俺は、美愛の右から左側に場所をかわり、肩を抱き寄せて頬が隠れるようにし、歩きだした。
「!えっ?祐…くん?」
慌てた美愛は下から俺を見上げて、動揺した瞳を向けてきた。
俺はかなりの心拍数になってるのを気がつかれないように、わざと素っ気なく言った。
「電車、乗るまで、な?
頬、イヤなんだろ?見られんの」
「ゆ、うくん…ありがと。
でもダメ。彼女さんいるよね?
私だったら悲しい、よ…?」
そう言って、クルリと身体を回転させて俺の腕から逃れ、ニコッとした。
あぁ…こんなにも誠実で…穢れてない…
こんな風に言われたらそれ以上は強く出られない…俺には由紀という彼女がいるんだと、思い知らされ苦しかった。
***
「あっ、まぁ、そっか。悪かったな…」
『ありがと、大丈夫』もう気にしないからと言う美愛。
少しひきつりながら笑う俺と、ふっ切ったような美愛は対称的。
あとは数学がどうとか、来月のテストヤバいとか、他愛ない話をして西中央駅まできた。