両想い【完】
俺が電車から降りようとすると、なんで?って顔をしてくる。
キョトンとした、そのあどけない顔が可愛くて仕方がなかった。
「送ってやるって言ったろ?
暇だし、まぁ、いいじゃん?」
そう言うと無理矢理降りて、改札を抜けた。
『仕方がないなぁ』と言いながら、降りてしまった俺に笑顔を向けながら、自宅は駅からわりと近くて、先週は山野がお泊まりしたんだよなんて言った。
5分ほどで、お洒落な黒とグレーの色合いに樹のブラウンを巧く使った2階建ての家が見えた。
「ここなの、今日はほんとにありがと、
祐君のお陰で真っ暗な気持ちから
抜け出せたし、なにより、
今までで一番たくさん、祐君と
お話しできてよかったぁ」
ニコニコでそう言われ、イヤな気分になるやつはいない。
俺も幸せな気持ちになりながら美愛と門前で向き合った。
「んじゃ、帰るな?……あの、さ?
さっきも、言ったけど…今日のとかさ、
他に何でも、俺でよければ話…聞くからな」
どうしても、彼女がいる俺だけど、ほおっておくことはできなくて、言ってしまったんだ。
「うん…ありがと…。嬉しいな。
そうだっ!今日のお礼、したいな…
祐君と真琴ちゃんに。あっ、でも
彼女さんが気にしちゃうのはダメだし…」