両想い【完】


雪でも降りそうに冷えた空気の中、二人はゆっくり歩く。


「美愛の父さん…あれは
怒ってんのかな?」


「ん~違うと思うよ
たんに、心配、かな。
祐君がってことではなく、
私が離れてくみたいな? 」


「なんか言われたのか?」


「昨日の夜ね、珍しく
遅い時間だったけど四人揃って…
私以外はお酒飲んでて、で
お兄ちゃんが『美愛は大学で一人暮らし』
しろとか言い出してね
お父さんとお母さんが正反対の意見で…
終わらせるのが、どんなにか大変だったか
しかも、お兄ちゃんはさっさと
寝ちゃうし…」


「ふぅ~ん
一人暮らししてくれるなら大歓迎
でも、なんで光輝さんはそんなこと
言い出したんだろうな」


「何でか…なぁ?
自分は忙しくても実家通いなのにね?」


「ふつ~妹にそんなの
勧めない気がするけど」


「今度聞いてみる。
でも、大学かぁ~
一人暮らしも憧れるけど…
実際は行く大学によるよね?」


「だなぁ…
やっぱ…医大?」


「どうかなぁ
私…医療には興味あるけど、
医師には、実はあまり関心がないの…
もちろん、お父さんとお兄ちゃんのことは
尊敬してるよ?
でも、自分が出来るか、苦しくても
初志を貫くほど魅力的な仕事か
わからないんだよね…」


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