両想い【完】
そこまで言って俺は立ち上がり、由紀の前で思い切り頭を下げた。
それこそ、膝につきそうなくらいにして。
どのくらい、そうしてただろうか…
「っ…その、子と…付き合う、の?」
少し涙声の由紀が聞いてきて俺は頭をあげて、首を横に振りながら苦笑する。
「イヤ…まだ全然…そんなんじゃないんだ」
言いながらしゃがみこみ、目線を由紀に合わせた。
「じ、じゃあ…別れないっ!
由紀、祐君好きだもんっ!イヤだよ!!」
由紀は俺の視線を避けて、俯き泣き出した。
「由紀…俺の気持ちは由紀には向いてない…
酷い言い方すれば…
好きって気持ちは最初から…
なかったって分かったんだ…わりぃ…」
「っ!そんなっ!酷いよ!!今さら酷いよ!!」
なんとも言えない空気が流れる。
しばらくの沈黙の後、由紀が涙声で聞いてきた。
「ね、ぇ…祐君の…好きな子って…
あの、美愛ちゃん?」
美愛の名前が急に出てきて俺は驚いた…。
「へっ?な、んで?」
随分間抜けな声で返事をしてしまった。
「昨日の…帰り…あたし、駅前カフェで…
お茶してた…そしたら、2人が…
通り過ぎて…祐君、その時…
あたしは1度も見たこともない、
嬉しそうな笑顔…して…」