両想い【完】


そんな様子をみた美愛が由紀のほうに手を伸ばしてきた。


「これっ!!美味しいんだよ♪」


そして、さっきの由紀より大きな声で、笑顔でキャンディを差し出している…。


近くにいた司書が、『飲食、大声禁止!これ以上騒ぐなら退室させますよ。』と美愛を見ながら言ってきた。


周りの奴らは『バカだなぁ』って視線を投げてきた後、すでに興味がないのか、こちらを見なくなった。


「清水せんせ、ごめんなさいっ!」


美愛は両手を合わせて謝りながらも、反省してシュンとしてるようには見えなかった。


司書が離れていくと、持っていたキャンディを無理やり気味に由紀の手にもたせた。


「あははっ、ごめんね?
私のせいで注意されてしまったぁ~。
由紀ちゃん、それ、ほんとに
美味しいから帰りにでも、
食べてみてね♪」


黙っている由紀に小声でそんな風に言って、また、勉強し始めた。


由紀はしばらく、キャンディと美愛を見比べたり、俺を見たりした後、それをポケットにしまい、勉強道具を片付け始めた。


「由紀?終わったのか?帰る?」


そっと聞いてみると、頷いてから『後でメールする、先に帰る』と言い残し図書室をあとにした。


< 40 / 364 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop