両想い【完】
中からはキーケースが出てきた。
革で出来ていて端の方に俺のイニシャルが刻んである。
「ありがとう…」
「使わなくて…いいからね?
でも、出来たら捨てずにいて、ね…」
「捨てたりしないよ」
そちらだけ、肯定してプレゼントをしまった。
涙が完全に止まったようなので、店から出て、帰ることにした。
***
あれからどちらも話さず、俺が降りる駅になった。
「あ…学校では、変な態度とかしちゃうかも…
だけど…今日みたいな意地悪はしない、
だから…」
「ぁあ…そうしてくれっと、助かる、
今日は祝ってくれてサンキューな。
じゃあな。」
動き出した電車の窓から俯き微かに震えているように見えた由紀。
また、泣いてしまったのかも…と思った。
でも、もう、俺からは話しかけたりメールしたりはしない。
『振られた』んだ、俺は。
由紀が振ってくれてカレカノという関係が終わったんだ。
由紀、ごめんな…ありがとうとも、強く思った。
明日から、自分の本心を偽ることなく過ごせるんだ。
それがとても嬉しかった。
朝は憂うつで、昼は苛立ち、そして今やっと誕生日らしく、晴々とした気分になった。
誕生日デートが、終わった…。