両想い【完】


「あぁ…参る、ただ、俺…
裏でこそこそとか、ずりィことはしない、
ぜってぇ…」


「だな…。誠実な美愛ちゃん相手なんだ、
真っ向勝負じゃね?」


楽しんでる風にいいながらも、心から俺を応援してくれてるのが分かる聡の言葉だった。


かなりの小声でこそこそ、体格のいい男子が話しているのは、端からみたらきっと気持ち悪かったかな…


話を切り上げ、聞こえていなかったかチラリと美愛を見たが、かなり真剣に試合を観ていたので俺も顔をピッチに向けた。


***


試合は3-2で西中が押していた。


後半残り10分となり、葵が下がった。


すると、相手はそこを上手くつき、押せ押せムードで攻撃を畳み掛けてくる。


葵の代わりのMFも悪くはないんだが、判断に時間がかかりすぎる。


一瞬の迷いがパスの遅れにつながり、カットされた。


キーパーがファインセーブを見せ、なんとかしのいで、試合終了。


***


ふと、選手ベンチを見ると、葵とさっきのMFがグラウンドを指差ししながら話している。


あぁ、あいつは見た目だけでなく、中味も格好いいやつなんだなと、素直に思った。

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