両想い【完】



テレビ放送での始業式が終わり、担任のやっちゃんこと、矢田信介〈やだしんすけ〉が明日からのカリキュラムやらいろいろプリントを配りながら話していた。


今日は授業がないから、あと少しで放課後になるな、美愛のことを聡か山野に聞きたいな、なんてことを真剣に悩んでいた。


由紀との帰りの約束はすっかり忘れていた。


「じゃあ、明日からは通常授業だ。
選択科目のレベル分けテストは来週、
1年の範囲全てだからな。頑張れよ。
今日は解散」


やっちゃんが終わりを告げるとガタガタと椅子を引く音と共に一気に騒がしくなった。


俺は話しかけてきた仲間に
「わりぃ、聡んとこ行くんだ」と断りS2に急いだ。


***


S2はまだ終わっていなかったらしく、ドアの前で待ってると、しばらくして中から教師らが出てきた。


開いたドアから無理やりのように体を入れ、聡のことをチラリと見ながら山野を探した。


山野は窓際の列にいて帰りの支度をゆっくりしていた。


すると、俺のすぐ横でいきなり声が聞こえた。


「真琴ちゃん!ごめんねっ」


そう言いながら山野に近づいていくのは、気になってしかたのなかった『彼女』だった。


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