両想い【完】
そのまま見ていると山野のすぐそばで両手をごめんね、しながらなにやら話していた。
「じゃあ、夜に電話ね!」
彼女はそう言ってバイバイと手を振り教室を出ていった。
俺はそれをただじぃ~っと見続けていた…
「ゆ、う、君っ!何してんだぁ?
じっと山野達見ちゃってよ」
聡が耳元で言ってくるまで、聡が近づいたことにも気がつかなかった。
「うわぁ!びっくりさせるなよ!」
俺は結構な大声を出して聡から離れた。
「んだょ、俺が側に居るのも
気がつかなかったわけ?
そんなに一生懸命に見ちゃって、
何かあった?」
近くの机に浅く座りながら小声で聞いてくるが、俺はそのまま聡に質問するより山野のほうがいいと思い、支度が終わり帰りそうな山野のほうへ、返事もせずに歩き出した。
「…山野…ちょいいいか?」
勇気を出すとか意を決してなんて感じではなく、案外自然に呼び掛けていた。
「なあに?」
朝、泣いた顔を見られたことを分かっているからか、少し気まずそうに返事をしてくる。
「わりぃな、帰るとこ。
いや、さぁ、…教えて貰いたいってか、
聞きたいことあってさ…」