両想い【完】
西中央に着き俺と美愛が降りた。
「真琴ちゃん!今夜、電話だよぉ~」
ニコッとしながら手を振り、電車を見送る。
俺は暁人に口だけで『うまくやれ』と言って手をあげた。
***
美愛の家までの道はもう覚えた。
ゆっくりと、陽が傾く中を二人で歩く。
6時半を過ぎた頃で、住宅街は静かだった。
俺は気になっていた猪瀬のことを思いきって聞いてみた。
「なあ?猪瀬ってクラスのやつに
告られたって、ほんと?」
「う、ん…少し前、にね。
いきなりお付き合いしてください、
ではなくてね、お友達にって言われて…
私…お話ししたりしてみたの。」
苦しい…すげぇ苦しいよ…美愛…
「まだ、わかんない、感じ?」
聞くのが怖い…けど、俺も先に進みたい…
「ん~…わかった、かな?
わかったっていうのか、
自分が猪瀬君に感じる、気持ち?が
見えたっていうか…
だから、明日にでもお返事しようとは、
思ってたの。心配かけちゃった?ごめんね?」
「そっか、向き合って見えたもんが
あったんだ…心配は別に…してない、よ。
ただ、どうしたかなって。ごめんな…」
『心配は別に』と言って美愛を見るとほんの少し寂しげに見えた、気がした。