Snow Drop Trigger
Episode 01
頬を撫でる風が、その冷たさを痛感させる。
辺り一面に転がる生物だったモノは、今ではその活動すら停止し、ただ奇妙な静寂を引き立てる存在でしかない。
自身の頭部から伝う赤色の液体の匂いが、不意に鼻につく。
辺りにも同様にその匂いは充満しているから、御世辞でも気分が良いと言える状況ではない。
無数の死体が地へ散らばっている、廃墟ビルの一室。
もう何年も使用されていないかのような錯覚さえも感じてしまう程、劣化が進んでいる。
……まだ、『あの日』から数ヶ月も経っていない。
俺は、遺体の右腕の部分に片足を乗せる。
酷な事をしているとは痛いほど感じているが、そうしないと前へ進めない。
ふと、その場から外を見る。
そこには辺りに一面に広がる廃墟ビルの光景が広がっているが、俺が目指すのはとある廃墟ビルの屋上に佇む影。
そこには未だ復讐を諦める事を考えてすらいない青年が、薄ら笑いを浮かべて立ちはだかって居た。
そしてその横に、かつて俺と共闘し、俺に容姿も声も何もかもが同じの人物が虚ろな瞳でこちらを見ていた。
……パキッ。
俺が乗っていた死体の腕は小さな音を最後に足元で砕けた。
砕けた場所から、ふわりと微粒子になったそれは廃墟を真上から包み込む不穏な空へと消えていく。
今でもよく考えてしまう。
あれは『始まりの終わり』だったのか、
『終わりの始まり』だったのか。
もしかしたら初めから『終わり』だったかもしれないし、『始まり』だったのかもしれない。
俺は、ゆっくりと深呼吸をした。
窓の外の廃墟の屋上に佇み嘲笑を浮かべる青年と、その横で無表情にこちらを見る少年に向かって、歩き出す。
微かにふわりと、俺の胸元から雪の結晶が散った。
「俺はお前であり、お前は俺だ」
だから俺は、お前を助ける為に
この力を使う。
「この世界に希望を。
そして報復をも越える、奇跡を」
辺り一面に転がる生物だったモノは、今ではその活動すら停止し、ただ奇妙な静寂を引き立てる存在でしかない。
自身の頭部から伝う赤色の液体の匂いが、不意に鼻につく。
辺りにも同様にその匂いは充満しているから、御世辞でも気分が良いと言える状況ではない。
無数の死体が地へ散らばっている、廃墟ビルの一室。
もう何年も使用されていないかのような錯覚さえも感じてしまう程、劣化が進んでいる。
……まだ、『あの日』から数ヶ月も経っていない。
俺は、遺体の右腕の部分に片足を乗せる。
酷な事をしているとは痛いほど感じているが、そうしないと前へ進めない。
ふと、その場から外を見る。
そこには辺りに一面に広がる廃墟ビルの光景が広がっているが、俺が目指すのはとある廃墟ビルの屋上に佇む影。
そこには未だ復讐を諦める事を考えてすらいない青年が、薄ら笑いを浮かべて立ちはだかって居た。
そしてその横に、かつて俺と共闘し、俺に容姿も声も何もかもが同じの人物が虚ろな瞳でこちらを見ていた。
……パキッ。
俺が乗っていた死体の腕は小さな音を最後に足元で砕けた。
砕けた場所から、ふわりと微粒子になったそれは廃墟を真上から包み込む不穏な空へと消えていく。
今でもよく考えてしまう。
あれは『始まりの終わり』だったのか、
『終わりの始まり』だったのか。
もしかしたら初めから『終わり』だったかもしれないし、『始まり』だったのかもしれない。
俺は、ゆっくりと深呼吸をした。
窓の外の廃墟の屋上に佇み嘲笑を浮かべる青年と、その横で無表情にこちらを見る少年に向かって、歩き出す。
微かにふわりと、俺の胸元から雪の結晶が散った。
「俺はお前であり、お前は俺だ」
だから俺は、お前を助ける為に
この力を使う。
「この世界に希望を。
そして報復をも越える、奇跡を」
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