Snow Drop Trigger
「ねー、何組?」

「もしやサボリ?」

「サボリは三年生からだよー!」


からかい半分といった所だろうか。

都立で一応は進学校なのだがやはり上級生になるにつれてこういう人物は結構多い。

五人組の三年生女子先輩方は、先に進めずに困る俺を他所に勝手に話を進めていく。


「君、この間出来たファミレスとかどう?」

「ミヨ、ファミレスよく飽きないねー」

「ファミレスは神だよ、タカナシちゃん!」


栗色のセミロングの髪を緩く巻いた、右耳に桃色の小花型のピアスを着けた先輩が俺に話しかけてきた。

会話を聞くに恐らく俺に話しかけてきたのがミヨ先輩。

それにツッコミを入れたのは、黒色のベリーショートヘアに一見サバサバしたような雰囲気のあるタカナシ先輩。


「君もどーせ暇でしょ?
あたしもコイツらも暇だから遊びにでもどうよ?」

「酷い括り方だなー、カナエ。
まあでも、今日は先輩達がサボリを公認してあげる」

「ヒヨリ、何様だよ!」

「ヒヨリ様だけど?」


金髪のロングヘアを耳の下で二つ結びにしてクルクルと巻いているカナエ先輩と、茶髪寄りの金髪のロングヘアをポニーテールにしているヒヨリ先輩。

そのヒヨリ先輩の発言に三年生の先輩方は一斉に笑い出す。

早く教室へ行かないといけないのだが、通してくれる気は全く無いらしい。

一頻り笑った後に、アッシュをかけたような髪色のショートヘアの先輩が思い出したように俺をつま先から頭までジロジロと見てきた。


「私、この子を見た事ある気がする……」

「どーしたの、ナナちゃん。
新手のナンパ?」

「うっせぇよ、ミヨ。
いやー、何かどっかで……」


校舎で擦れ違う時や登下校の最中にでも見かけたのだろうと思いつつ、俺はとりあえず強行突破で教室へ向かおうと足を踏み出した。

だが、俺を見ていたナナ先輩が不意に呟いた言葉でその足は進む事が出来なく成ってしまった。


「…………え?」

「ナナー、新手のナンパもいいけど一年生ドン引きしてるよ」

「いやでもさ、ヒヨリも居ただろ?
確かにあの時擦れ違ったんだって」

「ヒヨリ、そうなの?」

「全然見てなかった。カナエは?」

「私も見てないかな。
タカナシもミヨもどーよ?」


タカナシ先輩もミヨ先輩も首を振る中、ナナ先輩は俺をジッと見た。

思考が着いて行かずに置いてけぼりを食らっている俺。

だがナナ先輩はもう一度、同じ事を言った。


「朝、屋上に向かう階段を登ってたよね?」
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