Snow Drop Trigger
つい先程来たばかりの俺が、朝方に学校に居る訳がない。
むしろ人違いか見間違いだろうと思った刹那、俺の脳裏にただ一人だけ浮かび上がった人物が居た。
容姿も声も俺と全く同じで、ネックレスを剣に変幻出来る、雪のように冷たい雰囲気を持ち合わせている人物。
ーー"オウノメ スバル"。
「あの、その人の事を詳しく……」
「正恭」
遮られた声音は俺の名前を呼んだだけなのに、それは酷く冷たく聞こえた。
未だ聞き慣れない声音の主は、ナナ先輩の後ろから聞こえた。
中性的で性別が声だけでは判別出来ないが、ひょっこりとナナ先輩の後ろから無表情で声の主は出てきた。
「春矢……君?」
「呼び捨てで良いんだよー、っと!」
「⁉」
ナナ先輩の後ろから出てきた彼の名を呼んだ刹那、俺の首元に細い腕が巻きついてきた。
俺は先輩方から見たら、首元に腕を巻きつけられて……ではなく誰かに抱きしめられているように見えるだろう。
「……秋子さん、苦しい」
「秋子って呼ばないと離さない!」
「…………」
「その沈黙は、名前を意地でも呼ばないって捉えるぞっ?」
「…………」
無駄に力強い抱擁もとい首絞めを受けている俺だが、冷静に沈黙しているように見えて実はかなり首が絞まっている。
そろそろ離して欲しい。
「正恭に秋子、遅刻するぞ」
「秋子さん、離してくれ」
「……しょうがない、離してしんぜよう!」
そう言って首元から手を離してくれた秋子さんは、俺の右腕を掴む。
先輩方を一瞥して先に歩き出していた春矢君の後ろを歩き出した。
俺は一応絡まれた先輩方に会釈をして中性的な二人の後ろ姿を見ながら自分のクラスへと歩き出した。
「似ているな、君は」
「はい?」
渡り廊下を歩き終え、二年生のクラスが並ぶ校舎へと入った瞬間に春矢君がそう言った。
彼は俺をチラリと見た後、すぐに前を歩き出したのだが、それを見ていた秋子さんは悪戯っぽく俺に話しかけて来た。
「まあ、確かに似てるね!
何ていうか、……"全部"?」
最後の単語を聞いた時、俺の背中に一筋の冷や汗が伝った気がした。
冷や汗が伝った後の寒気が外の寒さと交わり、さらに寒気を増大させる。
秋子さんは意味深に笑うと、俺の腕を引っ張って一年生の校舎へと誘うように歩き出す。
何も聞かなかった。
いいや、聞けなかった。
彼女達は少なからず、情報を持っている。
「…………似てる、のか」
小さく呟いた言葉が、俺の腕を掴んでいる人物に聞こえたかは定かではない。
彼女達は、知っている。
ーー"オウノメ スバル"の事を。
むしろ人違いか見間違いだろうと思った刹那、俺の脳裏にただ一人だけ浮かび上がった人物が居た。
容姿も声も俺と全く同じで、ネックレスを剣に変幻出来る、雪のように冷たい雰囲気を持ち合わせている人物。
ーー"オウノメ スバル"。
「あの、その人の事を詳しく……」
「正恭」
遮られた声音は俺の名前を呼んだだけなのに、それは酷く冷たく聞こえた。
未だ聞き慣れない声音の主は、ナナ先輩の後ろから聞こえた。
中性的で性別が声だけでは判別出来ないが、ひょっこりとナナ先輩の後ろから無表情で声の主は出てきた。
「春矢……君?」
「呼び捨てで良いんだよー、っと!」
「⁉」
ナナ先輩の後ろから出てきた彼の名を呼んだ刹那、俺の首元に細い腕が巻きついてきた。
俺は先輩方から見たら、首元に腕を巻きつけられて……ではなく誰かに抱きしめられているように見えるだろう。
「……秋子さん、苦しい」
「秋子って呼ばないと離さない!」
「…………」
「その沈黙は、名前を意地でも呼ばないって捉えるぞっ?」
「…………」
無駄に力強い抱擁もとい首絞めを受けている俺だが、冷静に沈黙しているように見えて実はかなり首が絞まっている。
そろそろ離して欲しい。
「正恭に秋子、遅刻するぞ」
「秋子さん、離してくれ」
「……しょうがない、離してしんぜよう!」
そう言って首元から手を離してくれた秋子さんは、俺の右腕を掴む。
先輩方を一瞥して先に歩き出していた春矢君の後ろを歩き出した。
俺は一応絡まれた先輩方に会釈をして中性的な二人の後ろ姿を見ながら自分のクラスへと歩き出した。
「似ているな、君は」
「はい?」
渡り廊下を歩き終え、二年生のクラスが並ぶ校舎へと入った瞬間に春矢君がそう言った。
彼は俺をチラリと見た後、すぐに前を歩き出したのだが、それを見ていた秋子さんは悪戯っぽく俺に話しかけて来た。
「まあ、確かに似てるね!
何ていうか、……"全部"?」
最後の単語を聞いた時、俺の背中に一筋の冷や汗が伝った気がした。
冷や汗が伝った後の寒気が外の寒さと交わり、さらに寒気を増大させる。
秋子さんは意味深に笑うと、俺の腕を引っ張って一年生の校舎へと誘うように歩き出す。
何も聞かなかった。
いいや、聞けなかった。
彼女達は少なからず、情報を持っている。
「…………似てる、のか」
小さく呟いた言葉が、俺の腕を掴んでいる人物に聞こえたかは定かではない。
彼女達は、知っている。
ーー"オウノメ スバル"の事を。