Snow Drop Trigger
「そんなに節操無いように見える?」

「うーん、節操無いって言うよりも……」


そこで彼女は考え込み、瞳を細めた。

何故そんなにこんな事で真剣に考え込むのか。

思考を巡らせる彼女の頭に手を二回程乗せると、彼女は勢いよく俺を見上げる。

何か言いたそうにしていたが、口を閉ざしてマフラーに顔を埋めた。

マフラーに顔を埋めた彼女が、小さな声で呟く。


「ズルイよね、正恭って」

「は?」

「いいえー。何でも無いですー」


……鈍感。

ボソッと聞き捨てならない発言をした彼女の頭を、今度は髪がクシャクシャになるぐらいに撫でてやった。

すると顔を真っ赤にした彼女が慌てて俺の腹にパンチを喰らわそうとしてくるものだから、女という生き物は怖いとつくづく思う。

彼女の暴行が及ぶ前にとりあえず店内に入ろうとするが、彼女が真剣に俺を見据えて来るので、俺は仕方無く彼女と視線を絡ませる。


「ま、正恭。
あの、……その、えっと……」


次の言葉を声に出せずに、しどろもどろになる彼女。

人混みの中、立ち止まる二人の横を平然と歩いて行く歩行者。

イルミネーションの光が俺達と歩行者を照らす。


「……誕生日、おめでとう」


その声と同時に俺の胸元へ差し出される小さな箱。

それは橙と水色のパステルカラーのリボンでくくられていて、箱の左側に贈り物用の小さいシールが貼られていた。

その可愛らしい小箱と彼女の言葉を聞いて、俺はようやく気が付いたんだ。


「ああ、そうだった」


ポツリと呟いたその言葉に首を傾げる彼女の頭上に手を添えて撫でる。

俯いて俺を上目遣いで見る彼女に、言った。


「ありがとうな」




今日は俺の、16回目の誕生日だ。
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