Snow Drop Trigger
※ ※ ※ ※ ※
俺が店内に戻って初めに見た光景は、ガラスの破片と赤黒い液体が床に散らばっているものだった。
辺りを見回すと、逃げ惑う人々の中に涼弥達を見付けた。
だが此処で俺も逃れられるかと言うと、そうでもない。
何故なら逃げ惑う人々に気を取られて気付くのが遅くなったが、俺のこめかみ辺りに金属越しだが明確な殺意を突き付けられていたからだ。
「…………結局、狙われてるのか」
その金属は、この喫茶店にとても似つかわしくない拳銃だった。
拳銃はガーディアンレスキューなら許可制で携帯出来るとは噂で聞いたが、こんな用途に使うとは聞いていない。
呑気な言葉とは裏腹に、現場を理解する度に動悸が激しくなる。
茶色のゆるくウエーブのかかったショートヘアに、短いプリーツスカート。
猫目の彼女の瞳はやはりとても虚ろで、何処か不安になる。
「ガーディアンレスキューでさえも、かかるのかよ……」
"アザミ化"してしまったのは、今日2度も俺の不運に立ち会ってくれたガーディアンレスキューの羽生さん、その人だった。
その瞳とこの殺意は、明らかに"アザミ化"した人間そのものだっま。
二回も遭遇すれば嫌でも分かってしまう。
分かりたくもないけれど、彼女を見るとオウノメ スバルと春也君の言葉が脳裏に過る。
『"アザミ化"した人間を元に戻す事は不可能だ』
『君がもし世界を救いたいのなら、これを使うといいよ』
彼女を救うには、このネックレスを使うしかない。
でも、どうやって使うのかすら分からない。
そもそも俺に、このネックレスに、そんな力があるのかさえ信じ難い。
ネックレスのチャーム部分を片手に握り締めた俺をよそに、肌に金属を深く当てる彼女。
「どうして……」
返事が来ない事は分かっていた。
だが、彼女は結んでいた口を開き、抑揚の無い一定のトーンで呟いたのだ。
「全テハ、"オウノメ"ノ名ノ為二」
「…………オウノメ?」
彼女を横目で見た俺は、拳銃の引き金がゆっくりと引かれる動作を見た気がした。
全身に冷や汗が伝う。
超人で無い限り、これを避けるのは無理だろう。
間一髪で避けられたとしても、そこを狙い撃ちにされるのは目に見えている。
このまま引き金を引かれて、脳天突き破られて死ぬのがオチだろう。
思考を諦めが支配する。
だがそんな時、聞き慣れた声が俺の名前を呼んだ。
「正恭ぁぁあっ!!」
それは、勇気を振り絞ってこちらへ走って向かってくる涼弥だった。
危険な事は百も承知の筈なのに、彼女はこちらへと走ってきた。
突発的で無計画にも程がある。
だが、こめかみに当てていた拳銃が外れた。
しかし、部外者の涼弥へとその銃口が突き付けられていたのだ。
涼弥は、これを狙ったのだろうか。
何故、こんな事までして俺を助けに来てくれたのか。
分からない。
でも一つだけ分かるのは、涼弥を死なせたくはないという事だった。
俺が店内に戻って初めに見た光景は、ガラスの破片と赤黒い液体が床に散らばっているものだった。
辺りを見回すと、逃げ惑う人々の中に涼弥達を見付けた。
だが此処で俺も逃れられるかと言うと、そうでもない。
何故なら逃げ惑う人々に気を取られて気付くのが遅くなったが、俺のこめかみ辺りに金属越しだが明確な殺意を突き付けられていたからだ。
「…………結局、狙われてるのか」
その金属は、この喫茶店にとても似つかわしくない拳銃だった。
拳銃はガーディアンレスキューなら許可制で携帯出来るとは噂で聞いたが、こんな用途に使うとは聞いていない。
呑気な言葉とは裏腹に、現場を理解する度に動悸が激しくなる。
茶色のゆるくウエーブのかかったショートヘアに、短いプリーツスカート。
猫目の彼女の瞳はやはりとても虚ろで、何処か不安になる。
「ガーディアンレスキューでさえも、かかるのかよ……」
"アザミ化"してしまったのは、今日2度も俺の不運に立ち会ってくれたガーディアンレスキューの羽生さん、その人だった。
その瞳とこの殺意は、明らかに"アザミ化"した人間そのものだっま。
二回も遭遇すれば嫌でも分かってしまう。
分かりたくもないけれど、彼女を見るとオウノメ スバルと春也君の言葉が脳裏に過る。
『"アザミ化"した人間を元に戻す事は不可能だ』
『君がもし世界を救いたいのなら、これを使うといいよ』
彼女を救うには、このネックレスを使うしかない。
でも、どうやって使うのかすら分からない。
そもそも俺に、このネックレスに、そんな力があるのかさえ信じ難い。
ネックレスのチャーム部分を片手に握り締めた俺をよそに、肌に金属を深く当てる彼女。
「どうして……」
返事が来ない事は分かっていた。
だが、彼女は結んでいた口を開き、抑揚の無い一定のトーンで呟いたのだ。
「全テハ、"オウノメ"ノ名ノ為二」
「…………オウノメ?」
彼女を横目で見た俺は、拳銃の引き金がゆっくりと引かれる動作を見た気がした。
全身に冷や汗が伝う。
超人で無い限り、これを避けるのは無理だろう。
間一髪で避けられたとしても、そこを狙い撃ちにされるのは目に見えている。
このまま引き金を引かれて、脳天突き破られて死ぬのがオチだろう。
思考を諦めが支配する。
だがそんな時、聞き慣れた声が俺の名前を呼んだ。
「正恭ぁぁあっ!!」
それは、勇気を振り絞ってこちらへ走って向かってくる涼弥だった。
危険な事は百も承知の筈なのに、彼女はこちらへと走ってきた。
突発的で無計画にも程がある。
だが、こめかみに当てていた拳銃が外れた。
しかし、部外者の涼弥へとその銃口が突き付けられていたのだ。
涼弥は、これを狙ったのだろうか。
何故、こんな事までして俺を助けに来てくれたのか。
分からない。
でも一つだけ分かるのは、涼弥を死なせたくはないという事だった。