コワメンとマドンナ
夕方。オレンジ色の光が薄汚れた校舎を幻想的に装飾し、運動場ではジャージ姿の生徒達があわただしく部活の後片付けをしている。
俺はエナメルバッグを肩に引っ掻けて珍しく一人で学校を後にした。小柳は用があるからと泣き出しそうな潤んだ瞳で俺を見上げて先に帰っていった。
俺は柔道部で、奴も同じように柔道部だった。入学当時は廃部寸前だった部活だが、今では約15人となかなかの人数だ。
先輩は1人。もっといたのだが俺の入部と共に数人辞めて、残ったのは彼だけだ。だが最近は幽霊部員で、もうすぐ引退を控えている。同学年の奴は小柳とあと二人。残りは入学したての新一年生で、俺の“舎弟”を名乗る奴らだった。
校門をくぐり歩いて15分の駅に向かう。この学校は駅から遠く地元の生徒が多数を占めるために全校生徒の9割強が自転車通学だった。
俺みたいに電車で通う生徒は珍しく、少し遠くても自転車通学に乗り換える奴が結構いる。自転車があれば学校帰りに出かけることができて便利なのだ。
心機一転しようとわざわざ遠くの高校を受験した俺。まぁ中学の時と状況はあまり変わっていないが、今のところ不便を感じていない。