コワメンとマドンナ

学校を出て田んぼと畑に囲まれた農道を暫く歩くと住宅街に出る。
この時間帯はちょうど母親達が夕食の準備をしているのだろう。家々から味噌汁の匂いや、魚を焼いた匂い、それからカレーの匂いなどが風に乗って鼻まで届いてきて、鳴りそうなお腹をさすりながら足を早める。

途中小さな公園を通りかかる。小学生たちが帰りの時間を気にしながらキャッキャと走り回っている。
公園の中央に位置する背の高い金時計に目をやる。5時半を過ぎた。そろそろ彼らの母親が痺れを切らして公園に出向く頃だろう。

ぼんやりと歩いていると人影が目前を横切った。危うくぶつかりそうになって目が覚める。
「すいません」
女のか細い声だった。自転車に乗って公園から出た彼女は俺に背を向けて颯爽と走り去る。
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