コワメンとマドンナ

またあの人だ。
彼女の背中を見つめながらまたぼんやりする。

背中にかかる長い髪を後ろで一つにまとめている。ポニーテールなんて可愛らしいものではなくて、よくおばちゃんがやっているうなじ近い頭の下の方で結んでいる。
しかも時間をかけて綺麗に結んだようではなくて、数十秒で乱雑にまとめたのであろう結び方だ。

上の服は決まってグレーのフード付きのパーカーだった。暑くなるとヨレヨレのTシャツになり、寒くなるとダッフルコートと手袋、マフラーになる。

下は俺の学校指定のジャージを履いている。これは一年間変わらなかった。しかも、俺の学年色の小豆色。

同級生のはずの彼女だが一度も彼女を学校で見かけたことがない。まともに正面から顔を見たことがないのだが…。
正直同級生で知らない奴なんてまだ沢山いるし、彼女もその一人なのだろう。

この自転車の彼女は入学当初からたまに見かけているが、家に変えると忘れてしまうような存在だったのでたいして気にしていなかった。

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