コワメンとマドンナ

カラカラと窓を開ける音がした。閉めきってこもっていた空気が解放され、春のまだ少し冷たい風が入る。

春の日だまりのような笑顔か。
彼女もそんな笑顔なんだろうな。
彼女こそ俺の両親の元に産まれるべき人間だったのかもしれない。

そんなふうに考えているうちにまた彼女の顔を見たくなってきた。
気づかれないようにそっと…。
顔を後ろに向けたその瞬間、彼女も俺を見ていたのかバッチリ目が合う。
驚いて飛び上がりそうになった俺の目を見つめたまま、彼女はふわりと微笑んだ。

初めてだった。初対面の人にそのように微笑みかけられたのは。心臓がドキリと動く。
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