A-YA-KA-SHI☆バスター!!
「この前は一ヶ月も帰ってこなかったよ」
「・・・じゃあ・・・」
「援軍は期待出来ないってこと」


 ハンドルを握りなおし、彩は言った。
 そんな横顔を見ていると、心なしか、いつもの彩の余裕が消えているように思えた。
 こんな彩は初めてだから、美樹にも緊張が走る。


「あまり店からは離れられないけどね」


 あまり離れてしまったら、諒達に今のことが伝わらないような気がするのだそうだ。
 悠も今朝、出掛けにそんなことを言っていたような気がする。


「でもなんで、車に乗っている間は襲ってこないってわかるの?」
「奴に余裕があるってこと。どこにいても奴にはあたし達の居場所が分かるから・・・。車で逃げたのは、ただの時間稼ぎだよ。これからどうやってこの状況を乗り切るか、考えるためにね」


 そして、悠と諒がこの事態に気付くまでの。
 ・・・可能性は、限りなくゼロに近いが。
 とりあえず人気のない場所はどこかと聞かれ、美樹は考えを巡らせた。


「展望台・・・」


 ふと、いい場所を思い付く。
 展望台なら、店まで歩いても行ける距離だし、平日の昼間は殆ど誰もいない。


「オッケー。そこにしよ」


 彩はそう言って、車の速度を上げた。
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