あなたはまるで刃物のように...
序章
「あー、うん。そうそう。うん、あー、わかった。あはは!マジで!」
まるで恋人との電話そのものだ。
ご飯の最中に携帯なんていじらないんで欲しいんだけど。
「ちょっと…シンちゃん」
食卓にご飯を並べながら恋人の新一の電話が終わるのを待ってる。
「あーわかったわかった。あはは~」
恋人が目の前で食事の準備をしてるって言うのに
元カノと電話って…。
「あのさ、元カノと何話してたの?」
会話時間30分、昔の恋人と何を話すって言うのよ。
「仕事の事だよ。仕事なんだから電話がかかって来るのは仕方ないだろ?」
仕事…。
確か元カノとな職場が一緒だって聞いた。
新一の仕事は車の整備士。
車体の下に潜り込んで点検したり修理したりする仕事。
元カノはその会社の事務だったらしい。
「の割には随分楽しげだったけど?」
「愛想悪くなんて出来ねぇだろ」
全くこっちを見ず運んで来た料理を無造作に、まるで作業みたいに黙々と口に運んで行く。
仕事…、その一言で何も言えなくなる。