あいしてる
ほんと、いいかげんなんだから。
イライラしながら吐き出した煙草のけむりを目で追っていると、
「悪い」
後ろから聞きなれた声。
「もうっ…」
文句を言おうと振り向いた私の目の前に、まばたきするのも忘れてしまうほど大きな花束が差し出された。
「一度でいいから欲しいって言ってただろ?」
目を丸くして驚いている私を見て、満足そうに笑う彼。
さっきまでのイライラを消し去ってしまうほどの笑顔。
「そうだけど…。随分と前の話でしょ?なによ、今さら」
素直に喜べない私はそう言うと、煙草の火を消し花束を受け取った。
両手でそれを抱え込むと、色とりどりの花からは、やわらかな春の匂いがした。