あいしてる
彼は煙草に火をつけると、私と同じように目を丸くしている店員に視線を移した。
「あ…。少々、お待ちください」
彼の視線に気づいた店員が、慌ててその場を離れた。
放心状態の私に、
「話がある」
とだけ言って煙草のけむりを深く吸い込んだ彼。
沸々と怒りがこみ上げてくる。
「話なんて向こうでもできるでしょ?キャンセルしたってどういうこと?」
楽しみにしてたのに。
せっかくの記念日だったのに。
彼の勝手な行動に涙がこぼれ落ちそうになる。
唇を噛みしめ涙をこらえる私の前で、彼は腕時計の文字盤を親指でなぞりはじめた。
気持ちを落ち着かせようとしているときの、彼の癖。