あいしてる


あの日と同じカフェで同じ場所に座り、彼と向き合う。

変わらないのはそれだけで、


いつも遅れてやってくる彼が、今日は私より先に店にいた。


「ごめんなさい…」

彼の隣には、そう言って深々と頭を下げる彼女がいた。


そんな現実を目の当たりにした私は、ひとり置き去りにされた気分になる。


彼女の存在を打ち明けてから今日までの間に、彼の中では確実になにかが動きはじめている。

セーターの上から無意識におなかに手を置く彼女の中には、私がもう、手に入れることのない、彼の守るべき命がある。

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