あいしてる


「……帰る」

親友とは目を合わせずに、シートベルトを外し助手席のドアを開ける。

エアコンの風ですっかり冷えてしまった身体を、真夏の夜風が撫でていった。

狭く息苦しい空間から解放されて思わず泣きそうになったけど、そんな姿を親友に見せるわけにはいかない。

「しっかり悩めよ」

助手席の窓を開け、そう言った親友に、

「うるさいっ。…どんな返事だったとしても、泣かないでよ」

その言葉を投げつけて歩き出した。


『おまえがどんな答えを出したとしても、オレらは今まで通りになんていかない』


その言葉が重くのしかかる。

激しく動く心臓は、今にも破裂しそうだ。


あんたが悩んだ末に下した決断を、あたしはどう受け止めたらいい?


今までサヨナラしてきたどの恋人たちよりも、あんたはあたしにとって必要な人。

大切な人。


あんたを失いたくはないんだよ。

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