あいしてる
「バカみたい…」
夕陽の沈んでしまった海に視線を残したまま呟く。
「えっ?」
「なにも、こんなところまで連れて来なくてもいいのに」
「それっぽくていいだろ?」
なんておどけてるけど、余裕なんてないことぐらいわかる。
せわしなく動く親友の指先はきっと、たくさんの砂にまみれてる。
『返事…したいんだけど…』
親友にそう電話したのは、気持ちを打ち明けられた日から一週間後のことだった。
『随分と早くに答えが出せたんだな』
なんて言われたけど、本当はまだ、答えなんて出せずにいた。
…今も、まだ。
「自分じゃわからないから…あんたに教えてもらおうと思って」
親友と同じように砂まみれになった指先に息を吹きかけた。
「なんだよ、それ。……バカか、おまえは」
そう言って勢いよく掻いた頭をそのまま抱え込んでしまった。
「だって…」